アメリカの民主党と日本の民主党の違い(資本主義を否定するな!)

あまり政治のことは考えないようにしているのですが、今日立て続けに2本同じ議論になったので...

※僕は政治にはそんなに詳しくないので、もし僕が事実誤認していることがあれば、是非ご指摘ください。


(写真はhttp://www.nikkei.co.jp/news/main/im20090923AS3K2300S23092009.htmlより)

僕はポリティカルにはニュートラルなつもりなのですが、日本の民主党の今の政策には同意できかねる部分が多々あります。もちろん自民党政権をひっくり返し、競争環境を作り出しこと自体は非常に素晴らしいと思っていますし、政治家個人の資質を否定するつもりも毛頭ありません。

アメリカの民主党と日本の民主党の共通点

まずは共通点から。
党の名前の通り、本来的にはどちらもリベラル色が強く*1、どちらかというと弱者救済、小さな政府よりは大きな政府という方向を向いているという点は共通しているように感じます。
例えば、オバマは全国民に保険が行き届くようにしようとしていたり*2、鳩山政権はこども手当の充実、公立高校の無料化などを行おうとしています。

この辺りは僕は個人的には違和感ありません。好みの問題なのですが、例えそれらの政策で自分が払う税金が増えようとも納得できます。
中にはアメリカの共和党のように、ある意味での弱者切り捨てをしてrich gets richerになるような政策を好む人もいるかもしれませんが、僕はこの点はあまりこだわりがないのです。

アメリカの民主党と日本の民主党の違い

では、何が違うのか、と感じているのかというと「国家の富は一体誰が作り出していると思っているのか」という点です。
オバマが率いるアメリカ政権の場合、それは明確です。徹底的に競争環境を作り出す。場合によっては頭脳を「輸入」してまでイノベーションを促進する。国家全体でそんなことをしなくても良いが、一部の超優秀な人たちには徹底的に競争してもらい、科学技術力を強め、(もう不必要なんじゃないかと思ってもそれにも飽き足らず)ひたすらイノベーションを起こすような場を用意する。
例えば、ボストン、シリコンバレー、マンハッタンなどはこういう場所に該当するのだと思います。明示的に名前は付いていませんが「経済特区」みたいなものです。超優秀な人たちが国内外から多数集まり、競争する。そこではリスクマネーが飛び交い、新しいビジネスがたくさん作られては消えて行く。その競争を勝ち抜いたビジネスが国家を支えるような規模に成長する。もちろん、そこでは失業率も高い。ハイテク産業は従業員の側の失業リスクも大きいが、徹底的な競争環境を作り出すことで多産多死の中で自然淘汰が起こる。
アメリカという国の本質的な富はこうした一部の特別な「特区」が作り出しているのだなぁと思います。


他方、日本の今の郵政民営化逆行の流れを見ていると、「必要になったら国債を刷ってお金を増やせばいいじゃないか。郵政が買い取ってくれれば、市場にインパクト出ないし。」と言っているように見えて仕方ありません。まるで、富はイノベーションではなく国債発行によって作り出されているかのような気さえしてしまいます。
この流れを主導しているのは、実は民主党ではなく、亀井大臣だと言う人もいます。亀井大臣は政治家としては素晴らしい人なのだと思います。あのタイミングで自民党を飛び出して新党を作り、今回の政権交代ではキャスティングボードをしっかり握っているわけですから、トレンドを読む力、戦略に長けていることは間違いありません。ただ、僕は彼や民主党の今回の一連の政策には大きく反対です。
雇用を守ろうとするプレッシャーのあまり、リストラもできずに新しいことを始められなくなっている大企業がたくさんいます。

まとめ

何が言いたいのかというと、僕が当たり前だと思っていた以下の2つのことが、今の日本政権では全く考慮されていないように見える、ということです。

  1. 現状、我々が知りうる限り最も優れた経済システムは資本主義である。
  2. 資本主義の経済成長ドライバーは、イノベーションの促進である。

この2つは経験則みたいなもので、社会主義国家が壊滅状態に陥って、資本主義国家は繁栄しているから資本主義の方がいいよね、というようなことだったりきちんと論理的に証明しようとするとものすごく大変なのだと思いますが、とにかく僕はこの2つは当たり前のことだと思っていました(が日本の民主党では当たり前でないのかなと疑うようになりつつあります)。


アメリカが完璧だと思いません。平均的なアメリカというのは日本の地方都市なんかよりもひどくローテクで、イノベーションの「イ」の字もありません。一部の特別な「特区」でも過度の競争によってドロップする人も多数います。ただそれでも資本主義とイノベーションの追求だけは民主党であっても共和党であってもやり続けているように見えます。

他方、日本は「お札すればお金増えるからね。」という安直な議論しかしていないような気がします。日本全体がハイテク産業に向かうべきだ、なんてことを言うつもりはありません。ハイテク産業というのは、本質的に、資本の側も働く側もリスクが高いのです。そういうリスクを許容したい人たちだけが集まって挑戦できる場を作り、新しい産業を生み出し続け、多くの雇用と多くの税収を得る。
東京全部じゃなくてもいい。東京の一部だけでもいいし、違う場所だっていい。世界のどこにも負けない「資本主義特区」を作る努力をしてほしい。ただただそう思った一日でした。


(この記事は大きく僕の主観に基づいています。日本はとてもキャッシュリッチなので、このままの民主党政権の政策で突き進んでもすぐに国がダメになるということはないでしょう。そういう意味では、本記事は僕の好みを書いたものだと思ってもらえれば幸いです。)

*1:日本の民主党に一部リベラルでない人もいると思いますが全体としてはリベラルな方だと思います

*2:アメリカの健康保険は今は原則民間の保険のみで貧しい人は保険に入れない