「残念」合戦をものすごくポジティブに考えてみた

梅田さんの日本のWebは「残念」からの一連のウェブ上でのやり取りを見て、少し思ったことを書こうと思います。ものすごく主観的な意見で、僕の意見だけが正しいとは決して思わないけど書かずにいられないので書きます。

日本のウェブは本当に「残念」なのか

この問題は梅田さん自身が言っているように、好き嫌いの問題なのだと思います。確かに梅田さんが言うように、日本のウェブは英語圏のそれと比べて知的なもの、明るい将来に言及するものは少ないのは事実。でもこれは、ある意味日本語の弱さでもあるから仕方ない部分もあります。良い学術論文は全て英語で書かれるし、重要な特許は日本で出した後にアメリカでも必ず出願する。そう考えると、「知」が英語圏に集約するのはある意味仕方ないことでもある。「知」が英語圏に集約しているから、その「知」に触れる人たちがウェブ上で活動する機会も当然英語圏の方が多いのはある意味当たり前なのです。
他方、日本のウェブにも世界に例を見ない素晴らしいサービスもあります。例えば、レシピを調べたいと思ったときにはクックパッドがあるし(こんなにすごいレシピの集合知は世界中にないよ!)、家電を買いたいと思ったら価格comがある(こんなにすごいカタログ集合知は世界中にないよ!)。僕の観点で比較すると、英語圏は「知」つまり、中長期的に人類を豊かにする情報は圧倒的に強い。他方、日本語圏は、比較的短期的に人類を豊かにする情報はたくさんある。こういう構造なんだろうと思います。
冒頭に書いたように、ここから先は好みの問題で、梅田さん(僕もだけど)は「知」が充実している世界が好きだから、日本はその点では劣っているよねと言い、日本のブロガーはいやいや日本にもいいサービスたくさんあるよ、という話になっているのだと思います。

なぜ梅田さんが「残念」と言われてしまったのか

梅田さんがはてなの取締役で、はてなが「知」にあふれた世界と真逆に見えるから、「自分で何とかできる立場なのにそう言うなよ」という文脈で言っているのだと思います。少なくても表面的にはこういうことなんだと思います。
しかし、もう少しよく考えてみると、皆、梅田さんに期待してるんじゃないかと思うのです。梅田さんには、ウェブ進化論の時みたいにずっと明るい未来を語っていてほしい。Googleを褒めるでも構わない。とにかく、ウェブの将来は明るいんだと言い続けてほしかったのだと思います。それが急に「残念」だと言われたから、脊髄反射的に皆、攻撃的になってしまったのではないかと。
これが、僕が今回の一連のやり取りを「ものすごくポジティブに」捉えた場合の解釈です。
僕も含めて、日常のストレスの中で言いたいことが自由に言えない場合が多い人にとって、梅田さんというのは、明るい未来を「代弁」してくれる唯一の人だった、ということを皆が無意識に感じていたのではないかと気付きました。なぜこう思ったかというと、
はてなブックマーク > 日本のネットが「残念」なのは、ハイブロウな人たちの頑張りが足りないからかも知れない:小鳥ピヨピヨ
にあるはてぶのコメントを見ていると、「あぁ、皆、梅田さんに期待しているんだな」とふと思ったからです。

「残念」合戦は時計の針を戻すだけなので...

日本のネットが「残念」なのは、ハイブロウな人たちの頑張りが足りないからかも知れない:小鳥ピヨピヨに書かれているように、今回の一連の件でハイブロウな人の意見をネットで見かけませんでした。そもそもネット上にいないというのもあると思うのですが、ある意味、今回の一連のやり取りの真の相手はこの「ハイブロウ」な人たちだと思うのです。
ネットユーザーと梅田さんが相互に攻撃しあうと、梅田さんはもう何も書かなくなり、ネットユーザーは「ハイブロウ」な人たちに対抗する手段を失う。これじゃ、ウェブ進化論以前に逆戻りなんじゃないかと思うのです。
確かに日本は「ハイブロウ」な人が既得権を守ろうとし、彼らはネットにも出てこない。僕も含めて「ハイブロウ」じゃない人がネットに集まって陰口をたたく傾向にある。と、言い切ってしまうのは実に簡単なんですが、皆でこう言い合っても何も生まず、どんどん「ハイブロウ」な人たちの既得権が増すばかりで、僕たちは皆で損をするだけの構造にしか見えません。
じゃ、どうすればいいんだよ、と言われると難しいのですが、少なくても僕は梅田さんにはこれまで通りネットユーザーを代表して「ハイブロウ」な人たちに食い込んでいってほしいし、ネットユーザーはそれを支援するという以前の構造に戻ればいいなぁと思います。
僕自身も微力だけど、ブログを書いたり、サービスを作ったりという行為を通して、少しでもそういう見えない既得権と戦っていきたいと強く思っています。

最後に余談だけど「はてなブックマーク」に関して

これは完全に余談、かつ、私見ですが、はてなブックマークに関して。今回の一連の件の舞台がはてぶだったこもあり、批判の対象にもなっていますが、僕は「はてなブックマーク」は世界で最もいけてるSBMだと思っています。deliciousと比べても圧倒的に良くできていて、ぶっちぎりで勝っていると思います。サイトの哲学だけでなく、UI、SEO等まで含めた総合力で、2009年現在のコミュニティサイトとしての教科書にもなるのではないかと思えるくらいの出来ではないかと、お世辞ではなく感じています。(僕にもこんなのが作れたらなぁと強く思います。)
でも、一連のエントリーで批判されているように、誹謗中傷のようなコメントもある程度あり、ネットの「負」の部分の象徴のように言われ始まっているのがとても残念です。確かにまだまだ改良の余地が多々あると思うのですが、仮に僕がアドバイスを求められたら、こう言うと思います。

はてなからはてなブックマークを独立させて「はてなブックマーク(株)」(仮)を作る。資本もきちんとリスクマネーを入れて、Exitを前提にした経営をする。
はてなブックマーク(株)(仮)は、日本の現実社会との折り合いをとことんつける。営業マンをちゃんと雇用して、リアルメディアに近いところととにかく折り合いを付けていく。力業でもいいから、ネットの世界だけでとどまらないように、ウェブのパワーをレバレッジして、あらゆる情報を民主的に評価するツールにする。
(今ははてなユーザーしか使っていないから売上がほとんど無いように見えるけど)リアルと徹底的に折り合いを付けていくから売上もちゃんと立つ(というより立てる)。はてなブックマークというツールが、(力業でも何でも)リアルメディアに食い込んでいけばいくほど、ネットユーザーの声の重要性が社会的にパワーを持ってくる。(だから「ハイブロウ」な人たちも無視できなくなる。)

こういう事業計画を立てると思います。(完全におせっかいですいません。)僕は、はてなブックマークはてなのサービスで最も好きで、かつ、「ハイブロウ」な人たちも含めた日本を変えるパワーを持っていて、かつ、事業的にも最も大きくできるサービスだと思っているのです。