もはや「ポータル」という言葉は古い?

とある先輩と話をしていて、面白いことを考えたので。きっかけは楽天の好成績。こっから議論スタート!

楽天の経常利益4.7倍

仮想商店街運営の楽天が13日発表した1―3月期の連結業績は、経常利益が前年同期の4.7倍となる35億600万円だった。宿泊予約サイト国内最大手とオンライン証券を昨秋に買収したことで、連結規模が大幅に拡大した。主力の仮想商店街の好調も寄与、四半期の最高益を更新した。連結売上高は2.7倍の97億9000万円、連結営業利益は4.9倍の33億8200万円だった。

楽天好調の要因

楽天が好調なのは、明らかで、様々な機能の違うECサイトを買収したからだと考えられる。売上が2.7倍で利益が4.9倍というのは、もちろんすごい数字だ。

ただし、物理的な収益力が上がったと言うよりも「窓口一本化」による収益力向上というのが最も素直な分析のように思える。


楽天の目指す先

さて、去年の楽天の一連の買収をはたから眺めていて、僕は「三木谷さんは、やっぱり金融畑なんだなぁ」と再認識した。どういう意味かと言うと、三木谷さんは興銀マン→ハーバード→楽天創業というキャリアなわけだが、結局はネット上の決済機能で手数料を稼ぐという金融ビジネスに回帰しているなぁ、と改めて思った。

もちろん、普通の興銀マンだったら、ベンチャーをあそこまで持っていくことはできないだろう。ここで注目したいのは、買収前のキャッシュがたくさんある楽天は、ある意味どういう方向にも向かえたのではないかと思う。infoseekなんかを買収した時は、Yahoo!とやり合うのか、とも思ったが、彼はもっと先を見ていた。そう、楽天は「ECのポータル」を目指そうとしているのだ。(もちろん、そうなるとYahoo!オークションとは競合するが、昔の意味でのポータルとしては競合しない。詳細は後述。)


「ポータル」の価値は何であったのか?

さて、ここで、一つ考えたい。「ポータル」の価値とは何であったのだろうか。

僕の考えでは、ポータルの本質は、「膨大なアクセス数とそれを武器にした広告モデル」であったと思う。ネットの世界では、アクセスはほぼ無限に増え続け、そこでの広告ビジネスもほぼ無限に増える、というビットバレーの半ば信じられない宗教が、ビットバレー崩壊後もまだ残っていた。というよりも、正確には皆、どうしたらよいのかが分からなかったのだと思う。

ところが、日本では実質的に、ポータルと呼べるのはYahoo!とMSNくらいにまで淘汰が起こった。そして、これらの淘汰は、「ITバブルはやっぱり嘘だった」、「ITは一人勝ちの世界」という文脈で語られることが多かったように思う。これはある意味でポータルの本質を射抜いているようにも思う。


ポータルの形態の変化

さて、旧来ポータルが淘汰されていくのを見て、「結局、最初に始めた奴だけがおいしかったのね」と思った人は多いと思う。ところが、それじゃ終わらない天才がいたのだ。Googleであり、eBayであり、楽天であった。

例えば、Googleで一番すごいのは、彼らは「ポータル=ネットの世界への物理的な入り口」ではなく、「ポータル=検索結果」という新しい思想の元に、新しい地位を築き上げた。いわば、「検索ポータル」を。

楽天やeBayも同じだ。「ECポータル」。この概念を考案した結果が、宿泊予約サイトとオンライン証券の買収であり、今回の増益であるように思っている。それ以外では、例えばamazonは「本屋ポータル」だ。(個人的にはもっとユーザビリティを高くしてほしいが。)

さて、話を元に戻そう。今、ITのB2Cの世界で起こっていることは、「ネットへの入り口としてのポータル」の流行ではない。「機能別ポータル」の時代なのだ。その機能は、それぞれの会社のコアの部分で勝負すればよい。

タダ単なるポータルならYahooだけで十分だ。ネットユーザーは「何でも屋さん」のYahooだけではもう物足りなくなっている。その象徴がblogやSNSである。さて、僕らが欲している機能で、まだ満たされていないものはどんなものであろうか。