Long Tailに関して

Long Tailがちまたを賑わしているようです。ひできさんSWさん、そして梅田さん(この記事から4つ連続Long Tailネタです。)


ひとまず、もう電波関係は終わりそうなので、考察してみようと思います。

Long Tailとは何か


元はと言えば、SWさんが書かれている


ソフトウェアサービスでLong Tailは成立するのか、という議論が交わされている。


という話が発端のようですが、議論としては、99年ころからあるscale-freeとかPower Lawとかそのあたりの話がビジネスに飛び火したということに他ならない。

(17:39訂正)この話が発端ではなく、Long Tailという議論は前からあるようです。SWさん、皆さん、大変失礼いたしました。ただ、ビジネスとしてどう捉えるかという点は面白いかと思いましたので、以下はそのままにします。(恐らく、そんなに文脈ははずしていないはず。。。。。怖)


恐らく、飛び火した理由は、2つあるだろう。一つめは日本もアメリカもそうだが、メディア業界のビッグM&Aが騒がしいこと、特にネットと既存メディアの融合が叫ばれていること。もう一つは、blog, SNSなどのパーソナルメディアが台頭してきたということだと思う。


簡単に言ってしまえば、「長いしっぽの先は細いけど、細いものも束ねれば強くなる」的な議論ではある。


Long Tailとビジネスと


これらの議論でよく言われるのが、Long Tailはビジネスとしてとらえた場合にどういう意味を持つのか、ということだ。この辺りの解釈は、梅田さんの



ロングテール論は、ミクロに見たときに「マスからニッチ」へのシフトが起こるというような話ではない。マクロに見たときに、「マスの集積」よりも「ニッチの集積」のほうが市場が大きく、ネット事業ではリアル世界とのコスト構造の違いから、その「ニッチの集積」を効率よく追求可能になった、ということを論じているものだ。マクロに「ニッチを集積する」ことはネットなしにはできなかったし、大組織のコスト構造では相変わらず「ニッチを集積する」ことは収益性という観点からできない。ミクロに見たときにニッチがマスと同等の価値を持つ(そういうケースも稀にはあるかもしれない)とか、ニッチがマスになれる(そういうケースも稀にはあるかもしれない)とか、そういう議論ではない。


という解釈が僕のそれに最も近いのだが、どうもGoogleの増収などで拡大解釈されているようにも思う。


やはり、現実世界を見るに、「現時点では」マスとニッチが逆転するという構造にはなり得ていないし、それにはすごく時間がかかるのだと思う。bloggerの多くは、マスコミの記事に対して、何かモノを言っているし、SNSも40万人という世界ではとてもマスと張り合えるとは言えない。他方、今回のニッポン放送の件に関しても、一つ前のエントリーで書いたように、結局は「大人の解決」が待っているわけであります。w


Long Tailが現実になる日


ところが、このLong Tail現象(とでも言おうか)は確実に進行している。現時点では、マスとニッチが逆転することはないが、確実にその方向に向かっていると、僕は思う。そして、もしも、マスとニッチが逆転してしまうとすれば、べき法則はどうなるのか、とすごく考えてしまう。


以下は完全に私見であるが、ニッチの方がマスよりも強くなった場合、「強者は誰だ」という問題が起こる。資本主義を仮定する以上、貧富しかり、情報量しかり、差が生じて、必ず強者と弱者ができるはずだ。ところが、Long Tail現象下では、マスは強者ではなく、ニッチの複合体が強者なのだ。そうなった場合、僕らは誰を「強者」として信用し、目指せばよいのだろうか。恐らく、強者を嫌う人も多いだろうが、強者がいない世界というのも厳しいものがある。例えば、今、銀行、新聞、テレビがなくなったらどうなるかを考えてほしい。


さて、この問題は非常に難しいが、a href="http://blog.digi-squad.com/archives/000726.html"EPIC2014がヒントなのかもしれないと思うようになってきた。つまり、Long Tail現象が進行した場合、圧倒的に強者となるのは、「圧倒的な技術を持つ」かつ「圧倒的なデータを持つ」者なのだと思う。EPIC2004ではそれをグーグルゾンと言っているが、こういえばすごく現実的に分かりやすい。


Long Tailになるために


さて、ここまでは今までもよく議論していたのだが、最近よく聞かれるのは、「どうなればよりLong Tail現象に近づきますかね」という話だ。知るか、そんなもん、と言いたいところだが、そう言うと嫌われるのでw、僕なりの見解を。


僕は「コミュニケーションコストの低下」だと思う。これが今よりもずっと早く進めば、Long Tail現象になる日も近いと。コミュニケーションコストの低下というのは、単に携帯が定額になるとか、YBBが値下げするということではなく、ハードウェアにインターフェイスまで含めて、いかに身の回りの情報をデジタルにできるのか、という議論に集約されると思う。


例えば、100人のコミュニティを考えた場合、コミュニケーションコストが0に近ければ、100人の意見を集約した形での意思決定が可能になるはずだ。これがJoiの言うEmergent Democracyという話なのだと思う。つまり、ニッチは、単体としてはニッチだがそれらが集合し、双発的に結合されるとマスを超えるという話だ。


例えば、blogには、どういう機能が追加されて、bloggerが何人になって、どういう検索技術があれば、それらの存在価値(=経済価値と言ってもいいかもしれない)はマスメディアを超えるのか、という議論ができると思うし、その辺は少し探求したいとも思う。