ホリエモン逮捕に見る「学歴・人脈」という名の自浄能力

ついに逮捕されてしまった。書くまいと思っていたが、学ぶこともあるので、メモ程度に書いておく。

グレー×n=黒?

容疑は「証券取引法違反違反(偽計、風説の流布)」容疑である。よく報道では、投資事業組合を使った買収自体が違法であるかのように報道されているが、あくまで容疑は、会計に嘘を書いた、事実と異なる噂を流した、の2点だけである。

会計に嘘を書いたというのは、子会社の利益を本体に付け替えた、という疑惑であろうが、そんなことはどこの会社でも多かれ少なかれやっていることだし、実際に仕事を子会社→本体へ発注したんだと主張されればこれだけで逮捕というのは厳しいだろう。これは黒に近いグレー。また、風説の流布に関しても、投資事業組合自体は連結対象にすべきものでもないし、「実質上、マネーライフは投資事業組合支配下にあった」と言われても、「実質上」って何よ?ということになってしまう。従って、これもグレーのままである。

検察が逮捕に踏み込んだからには、確実に黒と言える何かがあるのだろうか。いくらメールが全部残っているからと言って、ちょっと無理があるのでは、という気がしないわけでもない。ここで、僕は今回の件が黒かグレーかを今の時点で推定することにはあまり興味がない。それは裁判所が決めることである。ただし、一番今回の件で学んだことは、グレーが複数個重なると黒になるということだ。

「学歴・人脈」は必要か

実は、今回の逮捕を見て、一番強く感じたことは、グレーを複数個重ねることに歯止めをかける人が社内にいなかったのか、という点である。歯止めをかけるべき人は、「グレーを重ねると、黒になるよ」ということを知っている人でなければならなかった。つまり、経験と見識がある人が身近にいれば、今回のような暴走は無かったのではないか。

僕は堀江社長が嫌いな訳でもライブドアが嫌いな訳でもない。むしろ、あそこまで徹底的に成長スピードを追求する姿にある種の尊敬をしていた。ところが、日本では、「グレーを重ねると、黒になる」という事実があり、彼らはそれを理解しなかった。

トップは大学中退、ナンバー2は高卒。これがライブドアの実態らしい。また、社外取締役監査役を見ても、彼らのメンターらしき人は見あたらない。もし彼らに恩師と呼べるような人がいたら、きっと今回のような事件にはならなかっただろう。誤解のないように、ここで僕は学歴は何にも増して重要で、いい大学を卒業することこそが重要だという類の議論をしたいのではない。中卒でもすばらしい経営者の方はたくさんいる。ただ、所謂、旧来型の日本の学歴社会の中で得られる人脈や師弟関係というものは自浄能力を働かせる上で非常に重要だということを、ホリエモンが教えてくれたような気がする。

シリコンバレーでは、きっと、VCやエンジェルがいるおかげで自浄能力が働くのだろう。いずれにしても、人間は必ず易きに流れてしまうので、監視してくれる人は事業のパートナー並みに重要だということを学んだ次第。