MySQLの「大人の割り切り」はそんなに悪い話じゃないよ

久しぶりに平日にブログを書いてみる。


MySQL、新機能追加は有償版の「MySQL Enterprise」だけを対象に

MySQLは16日、米カリフォルニア州サンタクララで開催中のMySQLコンファレンスの席上で今後の新機能追加は有償版の「MySQL Enterprise」だけを対象としていく方針を明らかにした。

これは、皆が騒ぐほど悪い話じゃないですよ。オープンソースというのはそういうもんなんだと思います。


どういうことかと言うと、現時点でのMySQLみたいに

  • オープンソースで配布しながらも、有償サポートを行う企業があって、その企業がコミュニティの中心にいる
  • オープンソースコミュニティがそこそこ大きくなって、製品も安定化してきている
  • この先どんなに頑張っても、利用者が100倍にならない(そのくらい広く浸透してしまった)

という場合、ビジネス的な意思決定として、今回のような意思決定は正しいのです。

RedHatの例を思い出そう

似たような例として、老舗Linux OSのRedHatがある。
RedHatは、

という歴史があります。

そして、RedHatのページを見ると、
http://www.jp.redhat.com/software/rhel/whichproduct/

オペレーティングシステム Red Hat Enterprise Linux Fedora Project
用途 安定し、サポートが充実し、サーティファイされたLinuxを企業、公官庁などで利用したい クリティカルでないコンピューティング環境で開発、または最新のテクノロジーを追及したい
歴史 2002年にRed Hatの企業向けLinux OSとして発表 2003年に発表、最新のLinuxオープンソース・テクノロジのための開発フォーラム
主な特徴 安定、信頼性、幅広いサポート。構築と運用の容易さ。サーティファイされた多くのアプリケーションソフトウェア。業界をリードするサーバ性能と拡張性、及びデスクトップ機能の高度な融合。 最先端の技術を早期、かつ頻繁にリリース
主な開発者 Red Hat 開発コミュニティ中心、Red Hatも貢献

という形になっています。つまりどういうことかと言うと、

  • とにかく最新の実験的な開発は、基本的にFedoraの方でやってね、
  • 安定してきたら、Red Hat Enterpriseにも導入します。
  • なんだかおいしいところ取りをしているようだけど、OSSのコミュニティ支援はちゃんとしますので。

という「大人の割り切り」がなされているような気がする。


そして、一番大事なことだけど、こうなったからと言って、RedHatが劇的にダメになったとは思わないし、むしろ皆なFedora使ってるよね、幸せだよね、という感じもする。

「特定の企業一社よりもOSSの方が強い」という現実をMySQLが理解していないはずがない

MySQLRedHatと同じような棲み分けをするかどうかはまだ分からないけど、僕はMySQLやSunが「よしこれからは金儲けのためにOSSコミュニティは切り捨てて....」みたいに考えているとは決して思わないし、そういう報道をしてる奴らを見ると、本当に大丈夫か?と思う。
というのは、もはや今のこの時代では、どれだけ優秀な会社であっても、OSSのパワーにはかなわない、というのが真実だと思うからだ。MySQLやSunがこの事実を理解していないはずがないと思う。(ちなみに、↑ではRedHatの例を出したけど、比較的老舗でOSSと最もいい距離を保っている会社は僕はSunだと思う。)


↑で「大人の割り切り」と書いたのは、今のMySQLくらいのサイズになると、無料版のOSSの一部として有償版を位置づけておくとリスクがありすぎます。
あまりにプロダクトが大きい上に、有償版と無償版のミッションクリティカルな度合いは全然違うから、「こんなにでかい上に誰がコミットしたか分からないようなプロダクトを有償とは言えサポートできません!!」となってしまうのがオチだと思う。
そうなると、OSSのコミュニティ運営の中心にはMySQL社がいるわけで、コミュニティ運営自体が危なくなる、という負の連鎖を生むからです。


従って、MySQLやSunがよほどアホじゃない限り、「MySQL Communityだけが全くメンテされずに....」という状況にはならないので大丈夫だよ、と思う次第です。むしろ、Communityの方でどんどん新しい機能が実装されて、Enterpriseはそのおこぼれに預かります的なことになる、と考える方が自然だと思います。