「私塾のすすめ」から学んだ5つの教訓

献本ありがとうございました。
本書のオリジナリティは、「ぶっちゃけ具合」にあると思います。(特に齋藤さんが)「そこまでしゃべってしまっていいの?」という場面が多々あり、読んでいる側がひやっとすることが多々ありました。もしかすると酒入ってるんじゃないの?*1というくらい、二人が惜しみなく自分たちのことを語っている本です。


逆に言えば、内容がてんこ盛りすぎて、書評を書くのが難しい本だなぁと思いましたが、

梅田 本を読むときに、「頭で読む人」と「心で読む人」がいると思っています。(中略)ある程度の基礎力は必要だけれど、それ以上のところの読書の意味として「心で読む読書」を心がけて、自分の生きる糧として知を使ってほしいです。(p.154)

とあるので、「自分の心に響いたことだけを勝手に解釈するメソッド」*2と称して、僕自身に響いたことだけを抽象化して、5つの教訓としました。
(皆さんも同じところで響くかどうかは分からないけど、心で読めば何かぐっと来るものがある本だと思います。)

教訓1:自分が信じた道を諦めない

齋藤 (中略)この三年、この五年、この十年はこの水に入ってしまうと決める。冷たい水で肌に合わないかもしれないけど、とにかく入ってしまう。(中略)その頃、「ご職業は」と聞かれると「思想家です」と答えていました(笑)。今はちょっと気恥ずかしいですが、当時は、「大学院生です」などと答える気になりませんでした。(中略)僕は大学を卒業した時点で、まったく自分を学生だと思っていなかった。研究職という仕事に入ったという意識で、「あなたたちと同等ですよ」と思って入ったら、あくまでも学生扱いされる。それに反発して、当時、スーツにネクタイで大学院に通っていました。スーツなんてものは本当は大嫌いだったのですが「これは仕事でやっているんです」というのをアピールするためにそうしていました。(p.122)

これは齋藤さんを齋藤さんたらしめている実に本質的な部分だと思うのですが、自分がこの道に入ると決めたら、自分に自信を持って、絶対に諦めない。
スーツを着ていったからといって、周りの見方が変わるということはないと思いますが、齋藤さんは「自分の心が折れないようにするために」わざとそうしていたのだと思います。
大抵失敗する場合の原因は「内部」にあります。自分自身だったり、自分のすぐ周辺に原因があるということです。自分さえ折れずに戦い続けられれば、いつか必ず勝てる、そう思わせてくれるお話でした。

教訓2:幸せのレベルを下げる

梅田 (中略)僕が自分の事業をつくってきたベースにあるのは、営業経験です。前の会社(ADLというコンサルティング会社)にいたときに、コンサルティングのプロジェクトを売る営業をずっとしていましたが、これはもうほとんど「ノー」と言われ続けます。無料のセミナーを企画して、経営者や部長クラス以上の人を呼ぶわけです、招待者リストを作って千人くらいに案内を送る。返事がくるのが十分の一で百人ですね。百人がセミナーに足を運んでくるということで、ホテルの一室を借りてプレゼンテーションをする。アンケートを配る。半分は無反応ですね。代理出席で若い人が情報だけ取りにくるというのもけっこう多い。それで残りの大半は「面白かったけど、お金を払ってまで付き合う気はないよ」という返事になる。アンケートの「一度訪ねてくれ」という項目に印がつくのは、百人の中で多くて五人です。その人たちを全部訪ねていっても、本当にプロジェクトが売れる相手は一人いるかいないかです。(p.130)

実に勇気づけられました。何が言いたいのかというと、梅田さんだって昔はこういう普通の営業をちゃんとやっていたんだ、ということです。そして、1000人呼んで成約するのが1件以下。つまり999件は断られているわけです。本書の中にもありますが、大半は「ノー」なわけです。そんなことで落ち込んではいけない、別に自分の人格を否定されているわけではない、と思うことが重要だと思います。
僕の場合は、例えばこの事例だと、100人「も」セミナーに来てくれた、5人「も」来てほしいと言ってくれたというように考えるようにしています。目標は高く持つべきですが、幸せの基準は低くした方が、同じ目標を達成するのに何回も幸せを味わえます。

教訓3:アウェーでもビビらない

齋藤 僕は結構、「無理やり」というのが好きなのです。やる気のない、ぐたっとした雰囲気の連中を変えていくというのが、むしろ快感だったりします。これは大人に対しても同じです。講演会などで講師としてよばれたときに、会場に最初から眠ろうとしている人がいます。(中略)そういう人に対する、僕の無理やり感ってすごいです。立ってもらって体操してもらったりする。
「うんざりしている方もいらっしゃるかと思いますが、そこに一人座ってていこうし続けるだけの神経の太さを持っている日本人はいません」みたいに言う(笑)。「私に関心がない方にはごめいわくですが、私は、自分がかかわった場が何かを残さないということに、自分自身が耐えられないので、付き合ってください。私に根拠のない敵意を持っていらっしゃる方は、ムダですから、今捨ててくださいね」。そうしているうちに、「だんだん根負けしてきましたね。私は根負けしません。みなさんはこの状況に慣れていないかもしれませんが、私はこの無理やりな空間に圧倒的に慣れていますから。さあそれでは.....」という具合で、それで、肩をまわしたり、実際に体操をやってもらいます。(p.78)

これも実に齋藤さんらしいやり方だと思います。そもそもそんな講演引き受けなきゃいいのに、と思う方もいるかもしれませんが、世の中、アウェーだと分かっていても、やらねばならない時もあるかと思います。
そんな時は、アウェーだから上手く行かないかもとネガティブに考えるのではなく、「アウェーでも勝つにはどうしたらいいか」ということを考えて、ビビらずに頑張ろう、そんな風に思える事例でした。


齋藤さんクラスだったら常に味方ばっかりで、ということではなく、アウェーでも勝ち続けたから今の齋藤さんがあるということなのだと思います。

教訓4:先に有言、後から実行

梅田 一度実験してみたいと思っていることがあります。今度、しばらくものを書くのを休業することにしました。(中略)それで、全国四十七都道府県それぞれ一カ所ずつ、ブログを通して知り合った人を訪ねる旅、「ウェブの細道」というのをいつかやってみたいと思っているんです。その構想を実現する決心が本当についたら、ブログに書きます。そうしたら「私のところにどうぞ」という人がかなり手を挙げてくれると思うんです。(p.187)

「その構想を実現する決心が本当についたら、ブログに書きます。」とありますが、ブログに書く前に本に書いちゃってる(笑)。読者も「梅田さんなら本当にやりかねんな。」と思う。そして、それが実際に起こる。
予定調和といえば予定調和なのですが、有言実行が続くと好循環になる。それだけではなく、有言することで、自分に目標を課すだけではなく、自分がやらないことも明確にできる。そんなことを一番良く知っている梅田さんだからこそ、本に「ウェブの細道」と書いたりしたのだなぁと思いました。

教訓5:「あこがれ」と「習熟」を明確にしてモチベーションを高める

齋藤 そもそものきっかけ、モチベーションがない人がどうしたらいいかというご質問ですね。端的に言うと、「あこがれ」と「習熟」が二本柱だと僕は思っています。「あこがれ」というのは、これがすばらしいんだとあおられて、その気になってやってみるということ。もうひとつ「習熟」というのは、「練習したらできた」という限定的な成功体験だととらえています。すべてにおいて成功するというのは難しいのですが、限定的な成功体験があると、「できるって面白い」と思える。それに何の意味があるかということは関係なしに、限定的な成功体験によってモチベーションがあがる。「あこがれ」か「習熟=限定的成功体験」のどちらかだと思うんですよ。(p.85)

この本の中で一番ぐっと来たのがこの部分だった。自分のこれまでを振り返って、どういう時にモチベーションが上がるかというのを考えると、この2つのいずれかなんですよね。モヤモヤが非常にすっきりした気分になりました。
これは、自分だけではなく、自分の仲間や後輩のモチベーションを気にする時も同じだと思います。この2つを明確にして、皆がモチベーション高く活動できるようにしていきたいと思いました。


私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

*1:たぶんそういうことはないと思います。一応、お二人の名誉のために注記。

*2:名前が長すぎて流行らないかも