greeへの提案(3)
前回「greeへの提案(1)」、「greeへの提案(2)」の続きです。
今回は、「ビジネスモデルを踏まえた戦略の考察」と、「提案」に関してです。長くなってきましたが、本エントリーで終わりにしたいと思います。
※本エントリーは、筆者の勝手な意見であり、特定人物に不快感を与えるつもりは毛頭ないことをご理解願います。
[分析4]ビジネスモデルを踏まえた戦略の考察。
さて、前回は両者のビジネスモデルの違い、と、一般的なネットビジネスの儲けどころに関しての考察をしたが、ここでは、さらに現在までの両者の取ってきた戦略を考察したいと思う。
まず、mixiについて。mixiの戦略は見ていて分かりやすい。一言で言ってしまえば、「兎に角、mixi内への滞在時間を増やすこと」につきる。そのために、新規ユーザーの増加、既存ユーザーのログイン回数の増加のために、日記、コミュニティ機能をひたすら充実させている。
これによって、「mixi中毒」とも言えるようなユーザーが誕生し、その一部が「有料ユーザー」になっていく。そして、もちろんPV増加に伴う広告収入の増加も見込める。つまり、mixiは「mixiになるべく多くの時間滞在してくれる」ためにあらゆるサービスを開発しているように見える。そうした「中毒」ユーザー数を増やすことが一番の収益源である「有料サービス」の増加につながるからだ。
他方、GREEを考えてみよう。GREEの場合も現時点までの戦略を見れば、mixiを模倣しているように見える。この「中毒」ユーザーを増やすという作戦が悪いとは言わないが、広告収入は、
広告収入 〓 PV数 = 登録者数 × ログイン頻度
であるから、ログイン頻度が同じだとしても登録者数が4倍違うのだから、この広告収益はmixiの1/4にしかならない。(ただし、徳力さんのようにmixiの方がログイン頻度が高いという人も多いから、現実はもっと低いかもしれない。)
現在、GREEがSNS市場において一人勝ちであればこれで全く問題ないと思うのだが、現在はmixiという更に収益を上げていそうなサービスが存在する以上は、より上を目指して欲しいと心から思ってしまう。
私からの提案:「ビジネスアワーのGREE」へ
これまでの分析を踏まえて、私なりの提案をしたいと思う。
一番大事なことは、「登録者数ではmixiと張り合わず、mixiとは違うビジネスモデルで収益を上げる」ことだと思う。別に登録者数が1/4でも同じだけの収益が上げられれば、それは全く問題にならないし、むしろ賞賛されるべきだろう。というのは、正直今から、mixiと同じ路線で勝負するのはあまり見込みがないし、もっと工夫することでいくらでもビジネスを作れると思うからである。
一つ目の提案は、GREEを「オンライン名刺管理サービス」に特化させてしまうということだ。これは今もある部分はそうなっていると思うし、徳力さんも書いているが、今よりももっともっと「あの人に連絡取りたい→GREEへ」というフローを確立させることが重要であると思う。
これによって、「GREE→携帯」、「GREE→メーラー」、あるいは「GREE→スカイプ」というようなアクセスのフローが出来上がれば理想的だと思う。つまり、オフィスアワーのみに使われるSNSで、かつ「なるべく1回あたりの滞在時間を短くする」サイトにしてしまうということだ。要は、「オフィスではGREE、自宅ではmixi」という棲み分けをしようということだ。
今よりも「友達ソーティング」、「友達内検索」、「友達のみの個人情報(メアド、携帯番号、スカイプID)の公開」が容易になれば、今よりも「名刺管理」としての機能が高くなると思う。というのは、誰しも名刺をもらってそれを自分のPCに打ち込むよりも、GREEでリンクすることで情報が得られた方が簡単だと思うだろうから。
(他方、「GREE経由で他サイトへ行く」という習慣ができれば、広告収益が増加するのではないか、というもくろみもある。)
二つ目の提案は、「広告の質を変化させる」ということだ。これを考える場合は、アメリカでSNSにしてはめずらしく収益を上げていると言われている「LinkedIn」が参考になる。LinkedInは、求人広告を出すSNSで、そこから収益を上げている。
現在GREEでは、いろいろな広告が出ているが、広告を「ビジネスマン向け」に特化させることを提案したい。この点に関しては、その(1)で述べたようにユーザーの質がmixiよりは単一であるGREEに有利な点でもある。
「ビジネスマン向け」の広告として考えられるのが、「求人広告」、「仕事取引募集広告」などであろう。例えば、GREE上で「PHPアプリ開発できる人募集」、「PHPアプリ開発できる会社募集」という広告が出ていることを想定してほしい。ここでもGREEの紹介機能は利点となる。他者が人や取引企業を選ぶ際に、第三者からの評価は非常に有益な情報になるからである。
これは、ブランディングを考える上で重要であると考えており、「GREE=ビジネスマン向けSNS」ということにすることが可能になると考える。そうすることで、ベンチャー、中小企業が月数万円くらいの広告をオンラインで出稿出来るようになり、long-tailのtailの方をよりよく取れるのではないか。
三つ目の提案は、APIの公開である。Amazon Webサービスがそうであったように、APIを公開することで、思いも寄らないサービスがたくさん開発され、AmazonがそうであったようにGREEがコミュニティとして更に発達することは十分に期待できる。
ともあれ、いろいろ勝手に(本当に勝手に)書かせてもらったが、GREEがSNSとして更に開花して欲しいと強く願うばかりである。
greeへの提案(1)
GREE Mobileがリリースされ、少し使ってみたが、確かに移動中に日記が読めたりするのは、便利ではある。
ここでは、これまでのGREEの道筋を踏まえて、生意気にもGREEへの提案という形でSNSビジネスを考えたいと思います。
※本エントリーは、筆者の勝手な意見であり、特定人物に不快感を与えるつもりは毛頭ないことをご理解願います。
まずは、徳力さんの「GREEはこのままmixiの後を追っていくのだろうか」を読んで頂きたいです。
非常に簡潔に整理された文書であり、
そういう意味では名刺管理サービス的だったGREEの方は、友達を確認したいときだけログインする程度になっちゃいますから、結局ログインするのは誕生日のお祝いメッセージを書くときぐらい。
広告だとか、PV勝負のビジネスをするのであれば、GREEもmixiの後を追うのは論理的なのかもしれません。
というあたりが、実に現実のそのまま書いているように思えます。
さて、そこでこのようにGREEとmixiでは利用の仕方が違うわけで、そこを無視して「GREEの急速なmixi化」をすることは果たしてGREEにとって良いことなのか、ということです。
そこで、徳力さんは、
ただ、ここまで利用者の熱量のようなものに差が出てしまうと、今からGREEがmixiに単純に追いつき追い越すというのはなかなか難しいようにも思えますが、どうなのでしょう?
という問いを投げかけています。もちろん、現在4倍以上に差が開いてしまった登録者数をひっくり返すということも不可能ではないでしょう。ただ、ここで僕が申し上げたいのは、そうではない方法です。
[分析1]利用者の層を考察する。
つまり、僕のここでの提案は、「GREEはmixiの競合ではない」という前提に立ちます。こう主張するには、論拠が必要ですが、残念ながら細かいデータは持ち合わせていませんので、以下の2点をあくまで個人的な経験則に基づいての論拠とします。
・GREEとmixiでは、利用する目的が異なる。(以下、徳力さんの主張)
実際、個人的な利用方法としても、相変わらずGREEの方が友人の登録数は多いものの、最近は明らかにmixiにログインする回数の方が多くなっています。
何しろ面白そうなイベントの企画がmixi内でされてしまうのが致命的。
イベントの日程調整から、告知から、事後のレポートまで、全部mixiで完結されちゃったら、定期的にログインせざるを得ません。一度、非常に興味のあるイベントをスルーしてしまってからは、コミュニティのチェックを欠かせぬ日々になってしまいました。
まぁ、mixiの3日間以内のログイン率70%という脅威の数字の理由も納得です。
歴史的な観点では、GREEの方が最初にブレークして、そのときの中心になったのはIT業界の若い方でした。他方、mixiはその後、IT業界やITリテラシーの高い人以外にも、今まであまりネットを積極的に利用しなかった人も取り込んでいるように思います。
つまり、誤解を恐れずにユーザー層を定義してしまえば、以下のようになります。
GREE:比較的ITリテラシーが高い、若手サラリーマン、学生。用途は、「名刺管理サービス的(+誕生日お祝いシステム的)」。
mixi:ITリテラシーの高くない人も多い。用途は、日記、コミュニティ(+オフ会)。
さて、長くなってきたので、次のエントリーでは、更に論を進めたいと思います。
greeへの提案(2)
前回「greeへの提案(1)」の続きです。
今回は、「両者のビジネスモデルの違い」と、「ネットビジネスの儲けどころ」に関してです。
※本エントリーは、筆者の勝手な意見であり、特定人物に不快感を与えるつもりは毛頭ないことをご理解願います。
[分析2](現状の)GREEとmixiのビジネスモデルの違いを考察する。
ここでは、両者のビジネスモデルの違いを考察してみたいと思う。
まず、両者に共通しているのが、「広告」による収益だろう。GREEにもmixiにもバナー広告やテキスト広告が表示されている。両者ともこれらによる収益はあるだろう。ただし、SNSは広告のクリック率があまり高くないとか、アフィリエイトも数千円/日とかあまりいい話は聞こえてこない。
他方、mixiは「有料会員サービス」もある。これは月300円のサービスではあるが、仮に全ユーザー数の5%が有料サービスを利用しているとすると、
300円 × 70万人 × 5% ≒ 1,000万円/月
ということになる。これだけの利益が毎月でれば、これだけでサーバー代+人件費くらいは何とかなっているとも想像できる。(よく考えれば、mixiは年商1億円のネットサービスということになり、これはかなりすごいと思う。)
GREEはこの1,000万円/月(推定)の部分が丸々ない状態であって、すごく厳しい経営をしているのではないかとも推測できる。
[分析3]ネットビジネスの「儲けどころ」を考える。
さて、次に、ネットビジネスの儲けどころを考えたいと思う。
まずは、YahooとGoogleの違いを考えたい。ご存じの通り、Yahooには検索以外の様々なコンテンツがあるが、Googleには検索しかない。
ここで注目すべきは、Yahooの場合は「サイトに長くいてもらった方が儲かる」けれども、Googleの場合、「サイトからすぐに出て行ってもらった方が儲かる」という点だ。どういうことかと言うと、Yahooはいろいろなコンテンツにアクセスしてもらう度に、(ユーザーに対してかどうかは別にして)課金のチャンスが生じる。他方、Googleは、検索結果の右側にある広告以外は課金のチャンスがないから、「たくさんの人にアクセスしてもらって、すぐに(広告をクリックして)他サイトへ出て行ってもらう」という仕組みが一番儲かるというわけだ。
ネットという媒体がいくら他の媒体と比べて、低コストで運用出来るからと言って、スケールが大きなSNSのようなサービスの場合、媒体の維持コスト(サーバー代など)だけでもばかにならないだろう。だからこそ、この「サイトに長くいてもらうことが儲けにつながるのか、逆なのか」という視点は大切であると思う。
こう考えると非常に興味深い。さて、もったいぶらして、続きは次のエントリーとさせて頂きたい。